役作りをするとき、多くの人が動機から入ります。
この人はなぜこう思うのか。過去に何があったのか。
必要な作業ですが、それだけでは足りません。
動機は作れても、機能が定まらない
動機を詰めても芝居が動かないことがあります。
理由は、動機は役の内側の話だからです。物語の側から見ると、別の問いがあります。
その役は、この場面で物語を前へ進めているのか。
止めているのか、動かしているのか、隠しているのか、暴いているのか。
これを役の機能と呼びます。
機能の見つけ方
シーンごとに、この問いを立ててください。
「この役がいなかったら、このシーンはどうなるか」
答えが「特に変わらない」なら、そのシーンでその役は機能していません。立っているだけになります。
具体的には、次のどれかに当てはまることが多いです。
・ 情報を出す(観客が知らないことを言う)
・ 情報を隠す(言わないことで場を持たせる)
・ 前へ進める(決断する、動かす、要求する)
・ 止める(引き留める、疑う、遅らせる)
・ 場の空気を変える(入ってくることで意味が変わる)
・ 観客の代わりに聞く(分からないことを質問する)
同じ役でも、シーンごとに機能は変わります。前半は止める側で、後半は進める側になることは普通にあります。
なぜ機能が必要か
動機だけで演じると、どのシーンでも同じ演技になります。
その役の性格は一貫しているので、当然です。でも物語の中での働きは場面ごとに違うので、同じ強さで出続けると、山が消えます。
機能が分かっていると、「ここは引く場面だ」「ここは出る場面だ」が決まります。全体の設計ができるようになります。
セリフの必然性が変わる
機能が分かると、副次的な効果があります。
セリフが覚えやすくなります。
丸暗記は、セリフを音の列として覚える方法です。だから相手が少し違う言い方をすると崩れます。
機能が分かっていると、セリフは「その働きをするために出てくる言葉」になります。止めるために言うのか、隠すために言うのか。目的があると、順番に必然性が生まれます。
覚えられないセリフがあるときは、記憶力ではなくそこの機能が分かっていないことを疑ってください。
分析の手順
台本を最初から順に読みながら、次を書き出します。
1. シーンの区切りを引く(場面が変わるところ)
2. 各シーンで、物語が何ミリ進んだかを一行で書く
3. その進行に、自分の役がどう関わったかを書く
4. 関わっていないシーンに印をつける
印がついたシーンが、設計の抜けている場所です。
印がついたら、どうするか
3つの可能性があります。
1. 実は機能がある
読み落としているだけの場合です。黙っていることが機能である場面はよくあります。聞いていること自体が働きになります。
2. 演出と相談する事項
台本上、本当に機能が薄い場合があります。ここは自分で解決せず、演出に確認してください。
3. 立ち位置や動きで作る
セリフがなくても、どこにいるかで意味は変わります。
一人称に立てているか
分析の最後に、確認することがあります。
この分析は、役の視点に立つための足場です。
機能を書き出して満足してしまうと、それは外側からの解説になります。目的は解説ではなく、その役として舞台に立つことです。
機能・目的・関係が把握できているほど、役の視点は具体になります。何を見ているか、何を知らないか、何を隠したいかが決まる。
分析は、そこに至るための手段です。
まとめ
・動機だけでは、どのシーンも同じ演技になる
・ 「この役がいなかったらどうなるか」で機能を出す
・機能はシーンごとに変わる
・機能が分かるとセリフの必然性が生まれ、覚えやすくなる
・分析は解説のためではなく、役の視点に立つため
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