公演が決まった。でも配役はまだ。台本も完成していない。
この期間、多くの人は待っています。
ここが、いちばんもったいない。
役が決まっていなくてもできること
配役を待たなくてもできる作業があります。
1. 台本全体を、誰の役でもない視点で読む
配役が決まると、人はどうしても自分の役ばかり読みます。まっさらな状態で全体を読めるのは、決まる前だけです。
2. 登場人物が物語をどう動かしているかを書き出す
各シーンで、誰が話を前へ進めているか。誰が止めているか。誰が隠しているか。
これは自分の役でなくてもできます。むしろ、他人の役で練習したほうが冷静に見られます。
3. 他人のセリフを覚えてみる
意外に効きます。
会話は反応です。相手が何を言ったから自分がこう返す、という因果でつながっている。相手のセリフが入っていると、自分のセリフは引き出されます。
役が決まる前に他の人物のセリフを入れておくと、自分の役が決まった瞬間、会話全体の構造がすでに頭に入っている状態から始められます。
なぜこれが「貯金」なのか
一度やった分析は、その作品でしか使えないように見えます。
でも実際に効いてくるのは、次の台本を読むときの速度です。
分析を10回やった人と、0回の人では、新しい台本を渡されたときに見えるものが違います。どこが山か、誰が動かしているか、自分の役がどこで引くべきか。
これは知識ではなく、読み方の習慣です。習慣なので、積み上がります。
そして積み上がったものは減りません。舞台に立つときの下地としてずっと残ります。
全部できなくていい
ここは強調しておきたいところです。
完璧にやろうとすると始まりません。
シーンの区切りだけ引く。主要な3人だけ書き出す。それでも十分に価値があります。
やらないのと、少しやるのとの差が大きい。少しやるのと、完璧にやるのとの差は、それより小さいです。
何を書き出すか(最小構成)
時間がないときの最小版を書きます。
シーンごとに、次の一行だけ。
「このシーンで物語は何ミリ進んだか」
進んでいないなら「進んでいない」と書いてください。それも情報です。
これだけで、作品の骨格が見えます。
余裕があれば、次を足します。
・そのシーンで強く出ているのは誰か
・ どこで力関係が入れ替わるか
分析だけで終わらせない
注意点を一つ。
書き出して満足すると、外側からの解説になります。
分析の目的は解説ではなく、その役の視点に立つことです。何を見ているか、何を知らないか、何を隠したいか。それが具体になるための足場として分析があります。
だから、書き出したあとに一度、その人物として台本を読み直してください。見え方が変わっているはずです。
稽古場に持っていく
もう一つ。書いたものを持っていって、演出に見せてください。
自分の解釈が正しいかどうかより、「どこが違うか」を早く知れることに価値があります。
違っていたら直せばいい。何も持っていかないと、直すものがありません。
そして、質問が出ない稽古場は伸びません。分析を持っていくことは、質問を作ることでもあります。
本番までまだ時間があるなら
配役が決まるまでの時間は、待ち時間に見えます。
でもここでやった分は、自分が舞台に立つときの下地としてそのまま残ります。
いま何もしないと、配役が出てから慌てて読むことになります。そのときには、全体を冷静に見る余裕がありません。
冷静に読めるのは、いまだけです。
まとめ
・配役前は、待ち時間ではなく蓄積の時間
・全体を誰の視点でもなく読めるのは決まる前だけ
・ 他人のセリフを覚えると、会話の構造が入る
・完璧にやらなくていい。少しやるだけで差がつく
・書いたものは稽古場に持っていく
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